サーファーとアングラーに関係する浜松市の新野球場構想と津波からの避難想定

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6/25(日)は静岡県知事選挙の投開票日です。

よっぽど争点にするネタがないのか、「浜松の新野球場を建築するか否か」を県知事候補に意見を求める始末。

ただでさえ市政と地域の折り合いが合わず揉めているのに、市としては「余計なことは言うなよ?」という心境でしょう。

 

この記事では、それが必要なのか不必要なのか。複数の視点を主観で提案します。

参考になるかはともかくとして、読んだ方が胸の内にでも答えを見つけてくれたらと思います。

盛り上がる選挙戦って何だろう?

今回の静岡県知事選挙は「現職vs新人」のタイマン。

公約と争点を簡単にいえば「維持か、刷新か」です。

話題に挙がるのは地方紙と地方局くらいで、全国的な話題は7/2の都議選に持ってかれています。

国会の最大議席数を保持する自民党が絡まない選挙として、政令都市の選挙としては珍しいかもしれません。

 

かたや転出率超過が止まらない県。かたや世界一ともいえる都市。

どちらが世間的に重要視されるかは、火を見るより明らか。

しかし、住む者にとっては重要な選挙であります。

 

細かいことは後にして本題から入ると──

私が住む浜松市に直接関係するのは、「篠原地区が建設地候補とされている『新球場』をどうするか」です。裁量があるのは市長と自治体なわけで、知事が口を出すと余計にこじれるのは目に見えています。

まあ知事の公約としては「県全体を良くする(曖昧)」を掲げればいいだけですし、メディアも争点のネタがないのか、今更感もある球場問題を掘り出してきたので、丁度いいと話題にしたわけです。

 

この新球場案は、「老朽化した現在の浜松球場に変わる物を」がきっかけ。

建て直しても土地が限られており、更なる収容人数が望めません。公式戦誘致の条件を満たせる広さを持つ候補地として挙げられたのが、海沿いの篠原地区。

津波浸水区域ともされている所に建てることで、世論を納得させる材料として、構想されたのは「災害(津波)避難施設を兼ねるスポーツ施設」であること。

この考えは新しく画期的……ですが、現実には無謀すぎる考えです。

 

成功すれば”先駆け”として、全国で同じ例が出て来ると思います、が……豊洲移転問題くらいにこじれています。

豊洲は基準値を超える有害物質などで揉めていましたが、新球場は「必要か否か」の二極で分かれています。

「なぜ両極端な考えになっているのか?」。それは実情を知ればおのずと答えがでます。

津波浸水区域にわざわざ建てるとか◯カじゃないの? 派

太平洋を望める浜松沿岸部は、現在防潮堤工事が行われています。

南海トラフの巨大地震で予想される津波から、これがどれほど被害を軽減してくれるのかは、こちらの図を見ればわかりやすいかと。

 

https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kiki/disaster/bousai/documents/tsunami_suisinkeikaku201404.pdf

 

ざっくりいえば、無しで想定内の津波が来ると「浜松市は壊滅」するレベル。かたや有りだと「沿岸部はどうしようもないが被害は最小限に留められる」ような感じ。

これは沿岸部に居を構える人々にとって、望むべき防災設備となるでしょう。

 

新球場の建設候補地としてあがっている篠原地区の場所はこんなところ──

 

 

「浸水域で、おまけに液状化が懸念される場所に、人が集まる施設を建てるのはどうなの?」ってのが論点。

総合水泳場(トビオ)が「先にある俺はどうしたらいい?」と嘆いてそうです。

 

ここが候補地となったのは、十分な土地があること。

水泳競技でも使われる総合水泳場があるので、総合して「スポーツセンター」としての運営ができる魅力があります。

これらに合わせ体育館を建設すれば、プロ野球のみならず、国体などスポーツ競技で全国からの集客も見込めるわけです。欲をいえば世界からの誘致も視野に入り、「スポーツ振興の県」としてアピールも可能です。

それらを踏まえて、経済効果と活性化も見据えるのなら、必要ではないかと提案されています。

 

しかし何故揉めているのでしょうか。

忘れたころに話が浮上してきますが、1年くらいアーダコーダ話しているようです。

それは地域住民が、「球場をPON☆と建てればいい話じゃない」と解っているからでしょう。

津波避難施設としての球場は本当に考えているの?

行政の説明は新聞などメディアが代弁するはずですが、そこから「津波から人々を守るための球場」どこまで考えているか──

これが未だに全く見えていない

球場をPONと建てて、「外野席うず高くすれば外壁が津波を守ってくれるやん!」とか気軽に考えていそう。

 

南海トラフで起こりうる津波の想定は、浜松沿岸で約16メートル、そして到達予想時間は発生よりわずか5分とされています

篠原地区の防潮堤工事はほぼ終えていますが、整備しても5m以内の浸水は免れないのは先の図でもわかることでしょう。

液状化で施設が半壊している場合、津波から逃れるための外野席が使えない状態だとしたら……。そんな考えも浮かびます。

 

  1. プロ野球など競技開催中で満員の状況に、地域の人々も球場内に避難できるスペースはあるのか?
  2. 閉鎖中であればどのように施錠を解除するのか? それは津波到達前に余裕を持って可能だろうか?
  3. 避難のため一気に押し寄せる車や人々を導く交通インフラは十分なのか?

 

この津波避難施設を兼ねる球場で起こりうる問題点は、重要さであげればこんな具合。

 

(1)と(3)を解決するのはほぼ不可能です。

避難経路で問題とされるのが、逃げる人や車の一極集中による交通渋滞

例え規律を守っても、先に逃げたモン勝ちと考える層が乱すのは明らかで、浜岡原発の避難想定でも終わりのない議論を繰り広げています。

仮にそれを解消しようと考えるなら、100m幅道路を多く整備し、災害用に特別な信号とルートを確立して、使徒が現れた第三新東京市(エヴァ感)並の速やかな避難ルートの制定が必要となります。どんだけ金かかるねん。

候補者も言及していますが、「津波が来るのに海に向かって逃げる意味がワカラナイ」も考えられます。そう考えるのも当然だなと。

 

(2)については遠隔操作でどうにでもなるとしても、それを稼働させるためのシステムが正しく機能するのか、維持できるのかが問題。それが出来なかった故の悲劇が、福島原発事故です。

もし人が解除するとしても、早朝や深夜の開場時間外にそれを成せる人が確保できるのでしょうか。

いつ起こるかわからないし、毎日開場するわけでもないのに、そのための人員を24時間交代制で確保するのは、いずれ”人件費のムダ”と抑えられるのでは?

周囲に民家がないこともなく、その人達に鍵を預けて”もしも”のために交代の役割分担を課せたとして、誰よりも早く到着することはできるのだろうか。また警備上の懸念、悪用は絶対にありえないのだろうか。

 

──このくらいは地域住民への説明会で語られてもいいと思います。しかし、その内容がロクに私を含む市民へ情報提供がなされていないんですよね。

政府はよく「説明不足」で叩かれてますが、こちらから”知ろうとしないと”、すべてを知ることはできません。

行政が提案することに反対することは楽でいいですけど、彼らとしては「ここをこうしたら?」って考えがほしい。その議論を促すための「説明会」です。

「地域活性化や経済促進のトリガーとなりうるのか疑問」派

現地を知る人には、この疑問が浮かぶことでしょう。

周りには民家も少なく、国道1号線沿いには多少なりとも飲食店がありますが、バイパス整備による交通分散のおかげか、それも年々減少しています。

東日本大震災の惨状を見て、沿岸区域の安全懸念から地価が下がり買いやすいものの、「住みたい?」と問われれば首を振る地域でしょう。

沿岸にあった企業も移転を進め撤退したり、農地として活用を考えても、そもそも成りたい人が居ない現状です。

 

そこに球場を含むスポーツセンターができたとして、人こそ集まっては来ますがそれは球場内だけのこと

経済活性化を考えるなら、「いかにしてお金を使える場所に誘導するか?」を考えなくてはいけません。

それを考えればイオンのような大型商業施設を併設するほうがマシです。避難収容人数も増えますしね。

 

そしてこの地域は、公共交通機関が絶望的なところが枷となってしまい、それを達成するのも難しい地域になります。

 

http://info.entetsu.co.jp/navi/pc/rosen.aspx?no=9

 

現在のバス路線で「総合水泳場」を目指すと、浜松駅からバスで30分ほどかかります。

地図上では近いJR高塚駅から行くとなれば、タクシーか徒歩のほうが早いくらい。高塚にはスズキの工場があるくせに、ここから交通機関で地域へ遊びに行くことも困難なわけ。

浜松は環状に走る路線がなく、郊外をあっちいったりこっちいったりするに、交通機関を利用した観光は「浜松駅を経由しないとほぼ行けない」ので、交通費がかさむ構図になっています。

駅から観光地への導線としては機能しますが、観光地同士での顧客の移動が難しく、市内全域で遊ぶことが難しいわけです。

 

──なので、車社会が促進されるわけ。

第二東名のおかげで企業誘致が進む北部は、「車以外で宅地からどうやって通うの?」という問題もある。車社会の都市で必要なのは拡張された道路であり、車を停める駐車場です。

企業としては安い土地であろうとも、従業員数が多くなるほど、駐車場を整備する費用がかさみます。最小限のコストで建設したいのなら、交通機関が盤石な地を選びたいことでしょう。

まあ対策として、公営の巨大駐車場を整備して、そこからバスや路面電車で企業へ……は現実的かなと感じます。でも残業などで就業時間がまちまちだと、瓦解するでしょうけどね。

 

浜松市は中心部の土地が現状で手一杯なので、成長を促すなら郊外しか選択肢がありません。そうなると公共交通機関が手薄な場所ばかりになります。

「中心部にビルをぽんぽん建てれば」も考えられますが、製造業が主な区域なので、ビルが建っても工場として入ることが難しいです。

若者は車を必要としない生活、ストレスフリーな通勤通学を望んでいるのに、それを叶える基盤と展望を整えなければ、転出が進むのは当たり前です。

 

この球場へは、名古屋ドームのように、応援ユニ着て電車で気軽に──って話もないです。

駅についたとして、更に30分もバスに乗る必要があるのだから、遠方から来るとナイター終了後、終電に間に合わないことも考えられる。

ジュビロ磐田のサポーターのほうが、応援しにいく環境は恵まれているかもしれません。

 

例えば中日ドラゴンズが浜松にきて、それを応援しようとはるばる愛知県から来る人達は、篠原の球場へスムーズに来れるのでしょうか? って話。

遠鉄バスはTOICAやSuicaなどの交通系ICが使えないし、わざわざ浜松くらいでしか使えないナイスパスを、そのためだけに買おうと考えます? 今はモバイル端末だけで済む非接触IC(FeliCa)が当たり前で、普及していれば使う派が多いのに。

「宿泊施設へのアクセスは?」も浜松駅近辺が主になるし、もともと宿泊施設の多い「弁天島」「三ケ日」「舘山寺」などへのアクセスが、球場からでは絶望的です。

 

現地を知る人ほど、「これが活性化を促すとは考えられない」と思っているはず。

大河ドラマの直虎で観光業が盛り返したのは、”たまたま”そこへの交通機関が備わっていたこともあります。

地域を繋ぐ交通機関としては、循環バスが機能している隣の湖西市のほうがマシかもしれません。

「浜風が強い地域なので、そもそも野球場として使えるの?」派

冬期は季節風が強く、風の影響を受ける野球はそもそも向いていない考えもあります。

それをいうなら屋内競技くらいしか残りませんが、それが津波避難として機能できるのかとなれば難しい。

「開閉式のドームにすれば」と考えられますが、維持費が半端ないので、赤字で即閉鎖も考えられます。

 

津波避難施設としての球場を考えるなら、土台を嵩上げして階上構造にするか、外壁をうず高くして風防も兼ねるかですかね。

階上構造のほうが向いていそうですけど、液状化も懸念されるし、収容人数による土台の耐久性に問題も考えられます。

外壁を高くして「コロッセオかな?」と感じるデザインにするのもウケるかもしれません。でもそうするならドーム型のほうが維持費は安く済みそうとも感じます。

篠原地区の球場はサーファーやアングラーの避難場所となりえるのか?

遠州灘の浜松沿岸部では、サーフィンや釣りのマリンレジャーが盛んです。

防潮堤が完成されることで、地域の浸水域は軽減されますが、沿岸で遊ぶ人達はどのようにして逃げればいいのでしょうか

津波到達予想時間はたったの5分(震源域が三重県沖ならそのくらいだけど四国沖なら30分くらい)。その時間内で逃げる算段は考えてあるのでしょうか。

 

整備後は防潮堤を越えて海で遊ぶことになるわけですが、10mを超える壁にはばまれると、「海岸にいる時に起きたら、どう考えても球場へ走って向かっても間に合わないよね?」と考えられる。

総合水泳場の南に降り口ができる予定で、ここから近い避難場所は西部清掃工場と、予定される球場、そして水泳場くらいになります。

 

例えば海岸線で遊んでいたとして、大きな地震が発生したとして即、西部清掃工場に逃げるとすると、砂浜と10mの壁を含んだ直線距離約500mを駆け抜ける必要があります。

発生時から「5分以内」に避難場所へ逃げることは可能ですかね?

そこに砂浜と壁があるわけだから、計算では可能だが実際には難しいことがわかると思います。

 

想定は起こるタイミングでいくらでも覆されます

でも考えられるすべてに対応するのは困難。

その時に最も適した避難経路を確保するには、常にそれを念頭に置く必要があるわけです。

ここで「サーフィンをしている時に津波が来たらどうする?」をまとめた論文があるので紹介します。

 

津波避難に対するサーファーの意識の全国調査

 

これはwebアンケートの意識調査をまとめたもので、海上にいるスポーツをしている人が、地震が起きて津波が来る想定を見越して、起こす行動の潜在意識が見れる内容です。

一部を抜粋すると──

 

東日本大震災時にサーフィンをしていたという回答者のみ(65 人/2964 人中)を対象に,「東日本大震災時どのような行動を取ったか」という質問に対する回答である.揺れを感じて逃げた人は 20%,仲間やローカルサーファーが逃げたから逃げた人が 16%であった.避難の合図が出て始めて逃げた人は 40%と,避難情報が出されるのを待つ傾向がある.また,逃げなかった人が 25%と比較的多かった

 

おそらく釣り人(アングラー)も同じような数値が出るでしょう。

あれが起きてから意識は変わり、現在は「地震→津波→即逃げろ!」が植え付けられているので、”受け身で避難”する考えは、このまとめよりかは減っていると考えられます。

ただ、避難する手段に車が60%と多くあることが、論文中でも懸念されています。

 

サーフィンや釣りに来るなら、大半が車を利用して訪れるでしょう。それも他所から来訪する人が多いので尚更です。

車は安くはないので手放したくないし、「走るより早い」という考えもあるでしょう。

車は速度でいうなら速いですが、道路という制約もあり、交通集中によって身動きが取れなくなる可能性のほうが高いです。

なので避難する最善の方法としては……

 

  1. 遊ぶ場所から近い避難施設をあらかじめ確認しておく
  2. そこへ至る経路を地図上で確認しておき、現在地からの方角を見失わないようにする
  3. 車も含めて道具はすべて置いていく
  4. 自分の意思で1秒でも早く行動する

 

ここまで考えて遊んでいる人は少ないのではないかと。

これらを「国が教えてくれないから」慢心であり傲慢な考え。

自ら知ろうとするほうが早くて確実。注意書き看板を多く建てても、それを見ようとしなければ、意味がありません。

 

何時何処で起きるかわからないのが地震であり、予想しにくいのが自然災害です。

常日頃から備えが必要だとはいわれていますが、「今ここで地震が来たらどうしよう…」と考え、考えうる避難方法をあらかじめ導いておくべきかと思います。

私は風呂やシャワーの時が一番嫌だなぁと感じています。

東日本の時はちょうどシャワーを浴びていたので、なおさら「どうしたら最善だったのか」を考えています。

 

海で遊ぶ以上、考えられる自然災害から逃れる確率をあげるため、個人の意識改革は必要かと思います。

またそれを促すのが行政であり政治の役目でもあるので、”やんわり”告げるよりも、厳格に伝えるべきでしょう。

浜松沿岸部の津波避難施設一覧

 

津波避難ビルの指定について|浜松市

 

篠原から中田島の沿岸部は、砂浜から近い避難施設(ビルやタワー)がほぼありません

それを鑑みるに、避難施設としての球場も必要かもしれないと感じます。

それが正しく機能するかが問われています。

 

合理を取るなら、砂浜に等間隔で避難タワーを建てるのが無難です。しかし、ウミガメ保護区でもあるし景観と建設維持、それらの費用を考えると実現が難しい。

沿岸部にある津波避難タワーは、港が近い場所ほど整備が進んでおり、これは従事する人達が恒常に存在するため必要不可欠だからでしょう。

レジャー目的で訪れる人々の多さは時期によってまちまち。なので”そのために”整備する予算を割くのは難しい。

 

でも「こういうのが足りないから、こうしてほしい」という考えを汲むのも行政です。

何も期待せずただ嫌い、反発するだけで認めないより、向こうは真摯な意見を求めて改善と最善を追求します。

ただの反論よりも、個人として問題に対する答えを持つことが大事だと、私は考えます。

 

まあ県知事選は期日前投票を終えているので、ひとこと言わせてもらうと……

2020年東京オリンピックの自転車競技開催地である「伊豆ベロドローム」を抱える静岡県。

あとたった3年で、それに向けた改装と近隣の交通インフラが間に合うんですかねぇ……て話。

都では競技場や宿泊施設などの整備が求められるし、全国で建築要員の奪い合いがはじまりそうですね。

 

高給待遇にはなりそうだが、突貫工事が必要すぎて、建設中の雇用問題が明るみになり進行が阻害され開催が危ぶまれる──まではあるあるでしょうね。

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