トップにガボッとくるライギョは、淡水ゲームの人気者。
近年、「江戸時代の文献に載ってたから在来種!」という研究結果があったらしく、それはまことか? と思ったので、詳しく調べようとしたのであった。
生物学を通してのライギョを知る釣り人は、それほど多くないんじゃないかなって。
この記事のまとめ
この記事では、淡水ゲームフィッシュとして人気のライギョについて詳しく解説しています。ライギョは、カムルチー、タイワンドジョウ、コウタイの3種類が日本に生息し、いずれも要注意外来生物に指定されています。カムルチーは最も大型で、90cmほどに成長し、全国に生息しています。タイワンドジョウは1906年に台湾から大阪府に移入され、コウタイは観賞用として人気です。ライギョはもともと中国大陸や朝鮮半島から食用として輸入され、現在でも釣りの対象として人気があります。在来種説もありますが、学術的証拠はまだありません。ライギョはエサに反応する瞬間が釣りの醍醐味で、特にルアー釣りが楽しめます。
ライギョさんを知る
「ライギョ(雷魚)」という呼称、実は総称です。
ほう!
英語では「Snakehead(スネークヘッド)」と呼ばれ、日本の魚釣りでは両方使われていますね。
ややこしい。
個別に分類すると面倒なので、今記事はライギョで統一します。
日本に生息するライギョは3種類。
- カムルチー(90cmくらいに育つ。デカイ)
- タイワンドジョウ(60cmくらい。ほどほど)
- コウタイ(小さめ。カワイイ)
これら3種とも、外来生物法のうち、要注意外来生物にリスト入りしています。
放っておくと自生はするが、在来の生態系にとってそれほど障害にはならない──てのが、”要注意”に含まれている理由。
でもまあ、もともと外来種なのでそれは当たり前のこと。
彼らの故郷は中国大陸や朝鮮半島など、ようするに”海の向こう”の東アジアから来ました。来訪した理由は主に食用ですね。
では彼らの歴史を垣間見てみましょう。
釣りで人気のカムルチー
「カムルチー」はほぼ全国に生息しています。ライギョゲームといえばこいつ。
90cmくらいまで育つため、3種の中では最も大型です。
ライギョは流れが弱く、草がうっそうとした水域を好むため、本流よりも中下流域に、分流なり用水路など、”住宅街の近くにある水辺”が対象となるため、身近にいるデカイ釣魚ですね。
1923-1924年頃に、朝鮮半島から奈良県に輸入され、「戦争時に向こうで食ったウマイ魚」とも知られている。ブラックバス同様に、食用として導入されています。
姿がニシキヘビ系と酷似しているため、スネークヘッドと呼ばれるようになったのでしょう。
入国記録では古めのタイワンドジョウ
タイワンドジョウは、1906年に台湾から大阪府に移入された記録があります。
当初はチョウセンナマズとも呼ばれており、東アジアでの生息域はカムルチーより南で、中国福建省からベトナム、フィリピンなどが原産とされている。
カムルチーと姿形が似ていますが、こちらの方が全長が小さめなのと、斑模様が細長いので、知っていれば分かりやすいレベル。
ライギョの特徴として、鰓以外で空気呼吸ができます。これが止水域でも生息しやすい理由ですね。
ただしそれだけでは生きれず、鰓で二酸化炭素を吐き出す必要があります。
空気呼吸するための上鰓器官(じょうさいきかん)は、外見ではわからない鰓から頭部に近い箇所にあるため、リリースをするなら傷つけないよう心がけたいところ。
中国では七星魚と呼ばれるコウタイ
他のライギョブラザーズとはうってかわり、コウタイの見た目は美しい。
温帯のタイワンドジョウ科では最小で、全長は最大で30cmほど。
日本に移入されはしたが、生息域は局所であり、個体数は多くない。
ペット向けなど観賞用が主な用途で、褐色の魚体に銀色の斑点が多数ある姿は、七星魚と呼ばれるのも納得の姿です。
1回の産卵で1000個ほど産むようなので、生存競争はかなり分が悪いのだろうと推測できる。
他のブラザーよりも増えにくいのは、日本の自然環境がもともと肌に合っていないから──なのかもしれない。
ライギョブラザーズの在来種説について
在来種説が浮上した要因は、カムルチーさん本来の生息域から。
カムルチーはもともと中国~ロシア沿海までが生息域。
北海道とロシアが陸続きだった時代があるし、それを裏付けるが如く、モンゴルからロシアに流れるアムール川の亜種が、北海道に居たとされているため、在来種説が浮上しました。
補足すると、日本に輸入されたのは「中国亜種」です。
江戸時代に雷魚を描いたとされる資料もあり、「これが在来種である証拠!」──と議論にあがりましたが、学術的証拠は今の所ありません。アイヌの文献にも記述がないので、現時点では「そうかも?」っていう推測だけです。
向こうの大陸との外交は古い時代からあるし、在来種と証明するには、日本の古い地層から向こうとは違うDNAの化石が出るしかないかもしれない。
鎖国していた時代でも、古い時代よりは多く来航しているわけだしね。
釣魚として人気な理由は普段の生活にアリ
ライギョは魚食性です。
他にはエビやカニの甲殻類、昆虫や蛙など、結構なんでも食うヤツです。
そのため疑似餌を使ったルアー釣りが捗ります。
もちろんそういうエサを使ったエサ釣りも認知されています。
それらは要素のひとつにすぎず、ゲーム性が高い所は別にある。
澱んだ止水域を好むため、ライギョさんは普段あまり動きません。物陰でジッとしていますが、水面にエサが来ると飛び出す勢いで捕食します。
居そうなポイントに浮かぶルアーを投げ込み、チョイチョイと動かせばガポッとくる。
非常にエキサイティンなのがライギョゲームの魅力ですね。
この「居そうなポイントを絞って攻めていく」のと、「ルアーが食べられる瞬間を見れる」てのが、ルアー釣りで人気者になれる秘訣です。
あとデカイこと。
食用としてのライギョブラザーズ
ブラックバス同様、もともと食用として輸入されたため、味は良いほう。小骨も少ないため、ナマズ同様、ウナギに代用できる可能性を秘めている。
わざわざ水質が悪い場所を好むし、生は寄生虫リスクがマシマシだし、泥抜きなど下処理が面倒……。
ウマイ釣魚の第一関門は「刺し身で食えるかどうか」だから、しょうがないね。
てことで、釣り人の感想は「食べたことないけどウマイらしいよ!」が多いのではないだろうか。
まあ臭みの大半は、皮を取ることで解決できるんだが──。
ライギョを美味しく食べたいのなら、原産国の東アジアに渡るのもいいかもしれません。向こうでは養殖されたライギョを市場で売っているくらいです。
ライギョの歴史を知れば釣り方が自ずと見えてくる
人間が朝起きて通勤通学し、「カエリタイ」と鳴き声をあげつつ住処に帰るのと同じように、魚にも習性があります。
ライギョの場合は生息地が特定されており、水面の獲物に反応するため、トップウォーターが有効と……。
いってしまえば、図鑑だけでも釣法が特定できます。
図鑑は生態にこそ詳しいですが、ソイツの釣り方に関しては専門誌が詳しいのは当然のこと。
ライギョに魅せられすぎたライギョ◯カ(敬称)が集ったこんな本もあります。
ライギョ釣りには、トルクが強めのベイトリールに、草木から引きずり出せるパワーを許容するロッドが欲しくなるので、バス向けより強靭なタックルになりやすい。
要注意外来生物ですが、「特定外来──」より規制が緩いため、リリースなり運搬が禁じられてこそはいません。
だからといって他の水域に放流したりと、無駄に増やそうとするのは感心できない。
増えた原因は違う所にありますが、主に接するのは釣り人だから、マナー次第で変化します。
その辺も理解して楽しむようにしましょう。