国土交通省が釣り文化振興のため、安全に釣りができるモデル漁港の意見を募集するとのこと。PDF資料が61ページと無駄に分厚いので、要点をおさえて紹介します。
これ実質、「私が釣りをしたい漁港ランキング」の選定では?
報道の文面からはそう思えますが、実態は違いました……。
一般の釣り人が応募できないパブコメに価値はあるの?
国交省が募集している「安全に釣りができて観光資源になるモデル漁港」は、一般の意見を公募するできる”パブリックコメント”じゃないので注意。
応募するためには、漁港を所有もしくは管理する団体があることが条件です。なので釣り人の皆さん、「自分のホームグラウンド自慢」をするためなら解散ですよー。
つまりは、こうこう改善すれば釣り客の見込みはこのくらいで観光収入もあるであるで! ……という自信がある前提での募集になります。
────応募できる漁港はあるのだろうか。
その要項資料(報道資料)はこちら。
仮に釣り人が真面目に応募するなら、漁業組合と自治体にかけあうことが前提ですね。これを知らないかもしれませんし。
あとは話しあい、釣り文化振興に適した漁港アピールを地域の役所にして、資料をそれっぽく作る手伝いをしてもらい、お上に提出する……みたいな流れかと。
報道を鵜呑みにすると、”釣りができる人気漁港ランキング“に錯視しますが、実態は「釣り客で稼げる漁港を教えろください」という内容です。
涼しい顔して何をいってやがる……?
根気がある人は先行事例があるこの資料を隅々までご覧ください
簡単なことを難しい言葉で綴るのが役所の仕事です。公共性だいじ(白目)。
そんなわけで、国交省が用意している報道資料に、少しでも目を通していただきたい。特に釣り人はしっかり読むことを勧めます。
すると、漁港が釣り人に無料で解放してあげていることは、何一つメリットがないとわかります。
その辺を資料から抜粋しつつ、説明していきます。
ようは「自営できる釣り公園を作ろう!」て話
今現在、釣りができる漁港は全国にいくつあると思いますか?
資料によると全国49箇所だけ。そのうち20箇所が観光利用できる環境のようですね。
見てもらえばわかる通り、全国全ての漁港が対象なわけではなく、全体からすればごくごく一部。
静岡県内だけで話をすると、熱海港はそのモデルケースに該当、清水港は新しく釣り公園の計画が進んでいます。緑マークの浜名は名目上海釣り公園で桟橋もありますが、今回のモデルケースからは少し外れています。
んで国交省が打ち出した「釣り文化振興モデル漁港」とは、地方創生政策の一貫です。
建前は、官民で持続営業できる釣り施設を作ろうぜ! ──で、実際は「ぼくたち詳しくないから(勝手に)教えてね?」という流れです。
う〜ん、ぐう蓄!
それらを伝えている文はこちら。
というわけで、政府としては「釣りを観光資源にする決まりを作ったのに、なんでお前らやんないの?」と疑問に思っているようです。
その実態は実際管理している人ならわかるでしょう。
管理するメリットは、やばいくらい何もないんですよ。
釣り人は漁港管理者の悩みを知るべき!
何事も当事者以外に、”他人の気持ち”を理解する術はありません。
都合よく事務的な言葉で、「釣り公園を作るとこんな厄介が待ってるぜ!」をまとめた資料がありました。自らまとめるのか……(困惑)。
おいおい保育園かよ。
ただでさえ海の事故は減らないのに、観光施設として来客が増えると、今以上にパリピがダイブして事故が増えて、管理団体と海保が泣いてる未来が容易に想像できます。
おまけに事故が起きた責任は「管理しきれなかったチミが悪いよね?」と、予防線を張る周到ぶり。──げえっ!
利用者が明らかに危険な行為をしていて、それを制止しても事故に繋がった場合、監視員と運営がまず罪に問われるとか、まんま学校と似たようなルールですね。
運営側が用意すべき安全設備の基準が細かすぎる件
釣り人は事前に救命胴衣を用意できますが、一見さんの観光客にそれを求めるのは酷です。
そのため、もしもに備えて釣り場に、誰でも存在と使い方がわかるように、救命装備を揃えるのが責務になります。
用意すべき物リストもありますけど──
ちょっと多すぎない? これを”釣りのため”用意するんですよ? 予算ヤバみ!
道具を用意するだけじゃなく、運営側に知識を求めるのも当然といえば当然。これもう国家公務員の扱いでいいんじゃない?
観光モデル漁港で成功した例はあります!
資料では「熱海港」と「新潟港」が紹介されています。
新潟港は高い堤防ならでは装備と意識を、熱海港はバリアフリーで解放される多目的釣り施設に。
東京と横浜みたいな都市部では、海釣り公園として営業しているところもありますね。大阪はわりとフリーダムですが、実質的に大阪港はほぼ全面釣り禁止です。
「海釣りをするに金を取るなんて絶対客こないだろw」
──とお思いの釣り人には、こんな論破資料があります。
有料になると面白いことに、客層が変化するんですよ。
「金を払うなんてとんでもない!」みたいな層が居なくなるので、最低限のマナーを守る人がメイン層になるから、全体の雰囲気がよくなってリピーターが増えることも。
でも釣り施設で最も重要なのは”釣果”です。
それは国交省も理解しているようで、モデル漁港の募集にも「安定した釣果が期待できる」という項目があります。
各漁港ごとにルールがあるので遵守しましょう
釣り人の中には、目の前にある看板の文字が読めない人もいるようです。
いくらルールを制定しても犯罪がなくならないように、ヤンチャな人は一定数存在するので、根気よくルールを周知させるか、現地で覚えこませるかの対処が必要です。
その例は以下の通り。
アウトドアは地球に自然の一部を貸していただく遊びです。
そこは貴方だけの場所ではないし、釣り人だけの聖域でもない。それを履き違えているから、閉鎖する漁港が後を絶たないわけ。
ここまで抜粋した資料をある程度読み込んでいただければ、漁港が釣り人のために無料で解放している理由なんてひとつもないことがわかるかと。
その漁港で釣りができる理由を一度考えてみては?
釣り人が釣り人を非難することはできますが、管理側の気持ちを汲むことは無理でしょう。
だからフィッシングショーにそういう展示が少ないんだろうなと勘ぐってしまいます。
昔から禍根がありそうだし、モデル漁港の有識者に釣具振興会が含まれていないのが、なんだかなぁと思います。
長々と書いてしまいましたが、釣り人にできることはシンプルです。
- 事故らないこと
- バカしないこと
- ゴミを出さない捨てない
- 施設を使えることに感謝を
- 釣りすぎ注意!
管理者の気持ちになるためには、部活で下級生が入ってきた時や、上司になった時を思い出しましょう。
人を思い通りに、それも全員動かすのは困難です。
ならせめて自分だけはルールを守ろう! ……その気持ちがあるだけで、観光モデル漁港は救われますし、既存の漁港もマナー向上で成り上がれることもあるでしょう。