単行本のページをめくり……、ある事に気づいて表紙をマジマジと見る。
「もしかしてコレ浜名大橋? てことは浜松市が舞台なのか!」
作中のポイントが地図無しでわかる浜松アングラーと、地元浜松市が舞台の釣りマンガが、ひょんなことから出会ってしまってヤバイ。
(手のジェスチャーをして)コレ貰っているわけじゃないよ!
釣りを知らない人も極めた人も楽しめるフィッシングコメディ
2日ほど市内の書店を巡り、とあるマンガを探していた時のこと。
ちょくちょく目立つ所に平積みされている、『JK×魚釣り』という異色な題材のマンガが、私を誘っている気がした。
結局なかったマンガはキンドルさんで召喚し、最後と決めた書店で「つれづれダイアリー」にバイトする。
存在は前から知っていた。それはアライブ本誌をたまたま見た時に──
「JKが説明しながらルアーでシーバスを釣ってる…」、ちょっと僕の頭ではよくわからないマンガがそこにあった。
いちアングラーからすれば”異世界転生モノ”よりありえない光景。それは記憶に残る理由として自然なことだった。
物語は普通の女子高生である森野アリスが、釣りをしにいくクラスメイトの橘音々子に出会うことからはじまります。
にわかアングラーは知識で◯される程、釣りに精通した音々子ちゃん。
一方釣りはまったくの素人であるアリスちゃん。
登場人物が「知る」「知らない」の2人組なので、どちらの目線で読んでも楽しめる。
これで釣りをしたくなるのかは別問題だけど、釣り場に制服女子高生が降りたつと、釣り人達がみんな背筋ピーンとしてイケメン化しそう。
堤防で壁ドンして、「魚釣ってみたくないかい?」と詰め寄り、事案にされるケースも想像できる。
「もしかしたらマナー向上の立役者になるんじゃないか? だからJKは釣り場に必要なんだよ! ただし制服でな!!(強調)」と力説したくもなってしまう。
現実の釣りはガチの戦場だが、ちょっと気を緩めて華やかな2人が織りなすフィッシングライフを楽しんでいただきたい。
釣り好きには「おっ?」と思えるシーンが盛りだくさん
例えばこのコマは、サーフでヒラメを狙うルアーメンは入れ食いです。
こ、これは……静岡県にあるルアーのOEM会社のアレじゃないですか!(遠回し)
そして値札が慣れ親しんだ形なので、「やだ、私の釣り生活を披露宴で見せられているみたい…!」と感じはじめる。
行き着く所までいくと、ミラクルジムがアリスを華麗なキャストで助ける流れもありそうでコワイ。
横にあったので2度見したけどやっぱりコレだよな……。
そして音々子ちゃんの釣り講座も開催されます。
サビキ・投げ釣り・ルアーと、にわかは相手にならないレベルの知識を持つJKによって、釣り好きの豚が論理武装するかと思うと胸熱です。
アリスちゃんは巻末でついに自分のタックルを買ってしまいました。
このままでは「とある浜松アングラー」の私よりも、浜名湖で釣りをする女子高生が誕生してしまうかもしれない…!
これは負けていられないな(行くとはいってない)
「つれづれレシピ」で釣った魚の料理もカバー
話の合間に挟んでくる豆知識と料理のコーナー。
釣った魚のキープとリリースの基準を説き、なおかつ自分で捌いて料理もできる……。
私の中では「カリスマJK釣りガール音々子」になってしまった。
なにそれ、本当に存在したら無敵すぎない?
某フィッシングショーで誕生する釣りガールも、少しは見習って欲しいものです。
レシピもガチなので、覚えておくと他の魚でも使えるし、知識として使えます。
魚釣り視点を抜きにしてマンガとしての感想
釣りをしている身からすると、面白く思える。
でも知らない目線で見るとどうだろう。
魚釣りは「クサイ」「キタナイ」「カネカカル」の3Kがあるし、待つことが多いから、絵的にどうしても地味になりがち。
だから超展開で、主人公が能力によって魚を釣り上げる内容も多いのだが、大抵はコケる。
なぜなら、釣り人からすると、それがありえないから気にいらないのでしょう。
釣りを題材にした「創作」は、そんな背景でいまいち受けにくかった(同人では見るけど)。
釣りをしない人には、カリスマJKアングラー音々子ちゃんが淡々と詳しく説明してくれる。
スレた釣り人はアリスちゃんの初々しさで浄化されていく。
どちら側に立っていても、どこに楽しみを見出すのかは人次第だが、あらゆる層に誘いをかける要素が詰まっているマンガである。
私の中にある壁(釣り創作はコケる)を壊してくれたのが、「つれづれダイアリー」かもしれない。
ほら表紙をよーく見てください、いい匂いがしてきそうでしょう?(ゲス顔)
「魚釣りはやったことないけど…」な人は音々子を追いかけてみましょう。
「オッサンばかりの釣り場は疲れたよ…」と潤いを求めたいアングラーはアリスの行動に昔を思い返しましょう。
『釣り人の町』ともいわれる浜松市を舞台にした「つれづれダイアリー」を、ぜひ読んでみてください。
試し読みもできるよ!
作中にある釣りポイントを地図なしで浮かぶ程度の地元アングラー
ブログのタイトルに「浜松」を入れているだけあり、とある浜松アングラーのさししくんは、作中で2人が釣りをしているポイントは全て網羅している。
こうしていうと、まるでストーカーみたいだな……(それな)
作中で見る風景は聖地巡礼ではなく、その地で釣りをした思い出回想モードに入ってしまう。
アリス「あっ…!(橘さんだ!)」
さしし「あっ…!(このポイントは!)」
なんだこのシュールな絵は。
女子高生が制服で釣り場にいたら、3度見からのガン見で通報されかねない。
でもマンガならじっくり見ることができる──すごいなマンガって!
ちなみにこの場所、ここだよね?
Googleストリートビューから
ストリートビューを使えば、つれづれダイアリーの2人をストークできる。そう、Googleならね。
ここからちょっと離れたところで、ダツと遊んだり、マゴチ釣ったり、カニ網が釣れたらカニが付いてた、なんてことがあったなぁ。
浜松市は釣り人の町?
と紹介されている記事もあった。地元に居るとよくわからないが、他からすれば”そう”なんだろう。
そうなる理由をちょっと考えてみた──
浜名湖沿いにはコンビニより釣具屋(エサ屋)があるし。
私は駿河湾のほうが夢があるけれど、向こうからすると「浜名湖に近くていいねぇ」といわれるし。
今切口は地元民より愛知側から来る人が多いような気がするし。
東海地方に強い釣具屋チェーンの本社があるし。
……うん、釣り人の町ってことでいいな!
けれども、湖内で開かれる大会などは地味だし、番組の取材などは結構浜松をスルーしていたりする。
チヌトップやキビレのルアーゲームでブームは来たけれど、やっぱりエサ釣りのメッカという感じはしている。
しかし、なんでまた浜松市と浜名湖を舞台にするのか。おまけに作中の背景が完璧すぎるじゃない?
──などと感じていたら、作者が浜松市在住のようで納得しました。ツイッターをフォローしたらリプライが来て恐縮であります。
もしかしたらどこかの釣り場ですれ違っている可能性が微レ存?
ブログタイトルに「浜松」を入れている以上、この作品に負けないよう、静岡西部からの釣りを発信していきたい。
そしてクサフグさんを愛でていきたい。
クサフグさんを遠投しようとして、肩をイワしたことがあります。それ以来、そっ…と海へ帰すようになりました。
イジメよくない、ゼッタイ。
このコマは思わず笑ったけど、作品ではクサフグ兄貴は可愛がられていますね。
私は膨らませて腹を撫でてから帰しています(えっ…)
釣りの楽しさを思い出させてくれる「つれづれダイアリー」
釣行記でよく一緒になる「友人A」がブログに挙がるのは、定期的に読んでくれている人は気づいているかと。
私達は、作中のスカートが似合う華やかなJK達とは対極となるオッサン(臭い)ですし、魚釣りにおけるマナーとルールを守る守らないだの、大人のルールにすっかり疲弊して、スレちゃってます。
「昔はこんな感じで、何もかも楽しかったな…(涙)」
でもそれは、自分だけな気もします。
なんだかんだで業界に絶望しないのも、最近エサ釣りが楽しくなってきたのも、友人のおかげと思っています。
釣行記を見返すと、その時のテンションがモロに出ている時があったりする。
ちょっと前まで事務的な文で、たとえ釣っていても「つまらないな」と感じていた。
これから先の釣行記が、少しハジけるようであれば、友人と「つれづれダイアリー」のおかげになるかもしれない。
たまには浜名湖で夜釣りしてみようかな……。
【余談】~イシグロで推されていたら面白そうなので見に行ってみた~
2人が訪れた釣具屋の店内が、グロ入野のレイアウトぽいと思っていたら、巻末にイシグロの名前があって吹く。
「通り道にあるから、いっちょ冷やかしにいってみるか!」
地元民は聖地巡礼ではなく、ただのルートなのである。
結論からいうと、特に何もありませんでした。
1巻も発売して最新号でCカラーとっているのに、もっとこう……POPに「当店がマンガに登場!」とか、釣り情報のボードにデカデカと宣伝して「釣りの情報は?」と常連にキレられているのを想像していたのに、普通だった。
弁天島駅を降りたら、つれづれダイアリーのイラストがバーンとなって、「聖地はこちら♥」くらいに流行ればいいんだ。